8:1  第 三 款 ガリレアに 於 る 種々 の 奇蹟    イエズス 山 を 下 り 給 ひしに、 群衆  夥 しく 從 ひしが、
8:2 折 しも、 一人 の 癩  病者  來 り、 拝 して 云 ひけるは、 主 よ、 思召 ならば 我 を 潔 くすることを 得  給 ふ、と。
8:3 イエズス、 手 を 伸 べて 彼 に 触 れ、 我意 なり 潔 くなれ、と 曰 ひければ、 其  癩病  直 に 潔 くなれり。
8:4 イエズス 之 に 曰 ひけるは、 慎 みて 人 に 語 る 勿 れ、 但  往 きて 己 を 司祭 に 見 せ、 彼等 への 證據 として、モイゼの 命 ぜし 禮物 を 献 げよ、と。
8:5 斯 てイエズスカファルナウムに 入 り 給 ひしが、 百夫  長  近 づきて、
8:6 願 ひて 云 ひけるは、 主 よ、 我  僕  癱瘋 にて 家 に 臥 し、 甚 く 苦 しめり、と。
8:7 イエズス、 我  往 きて 其 を 醫 さん、と 曰 ひしかば、
8:8 百夫  長  答 へて 云 ひけるは、 主 よ、 我 は 不肖 にして、 主 の 我  屋根 の 下 に 入 り 給 ふに 足 らず、 唯  一言 にて 命 じ 給 へ、 然 らば 我  僕  痊 えん。
8:9 蓋  我 も 人 の 権  下 に 立 つ 者 ながら、 部下 に 兵卒 ありて、 此 に 往 けと 云 へば 往 き、 彼 に 來 れ[と 云 へば] 來 り、 又  我  僕 に 是 を 為 せ[と 云 へば] 為 すなり、と。
8:10 イエズス 之 を 聞 きて 感嘆 し、 從 へる 者 に 曰 ひけるは、 我  誠 に 汝  等 に 告 ぐ、イスラエルの 中 にても、 斯  程 の 信仰 に 遇 ひし 事 なし。
8:11 我  汝  等 に 告 ぐ、 多 くの 人  東西 より 來 りて、アブラハムイザアクヤコブと 共 に 天國 に 坐 せん、
8:12 然 れど 國 の 子等 は 外 の 暗 に 逐出 されん、 其處 には 痛哭 と 切歯 とあらん、と。
8:13 斯 てイエズス 百夫  長 に 向 ひ、 往 け、 汝 の 信 ぜし 如 く 汝 に 成 れ、と 曰 ひければ 僕  即時 に 痊 えたり。
8:14 イエズスペトロの 家 に 入 り 給 ひて、 彼 が 姑 の 熱 を 病 みて 臥 せるを 見 、
8:15 其  手 に 触 れ 給 ひしかば、 熱  其  身 を 去 り、 起 きて 彼等 に 給仕 したり。
8:16 日  暮 れて 後 、 人々  惡魔 に 憑 かれたる 者 を 多 く 差出 ししが、イエズス 惡魔 を 一言 にて 逐  払 い、 病者 をも 悉 く 醫 し 給 へり。
8:17 是  預言  者 イザヤによりて 云 はれし 事 の 成就 せん 為 なり、 曰 く「 彼 は 我  等 の 患 を 受 け、 我  等 の 病 を 負 ひ 給 へり」と。
8:18 イエズス 周圍 に 群衆 の 夥 しきを 見 て、 湖 の 彼方 へ 往 かん 事 を 命 じ 給 ひしかば、
8:19 一人 の 律法  學士  近 づきて、 師 よ、 何處 へ 往 き 給 ふとも 我 は 從 はん、と 云 ひしに、
8:20 イエズス 是 に 曰 ひけるは、 狐 は 穴 あり 空 の 鳥 は 巣 あり、 然 れど 人 の 子 は 枕 する 處 なし、と。
8:21 又  弟子 の 一人 、 主 よ、 我 が 先  往 きて 父 を 葬 る 事 を 允 し 給 へ、と 云 ひしに、
8:22 イエズス 曰 ひけるは、 我 に 從 へ、 死人 をして 其  死人 を 葬 らしめよ、と。
8:23 イエズス 小舟 に 乗 り 給 ひ、 弟子  等  之 に 從 ひしが、
8:24 折 しも 湖 に 大 なる 暴嵐  起 りて、 小舟  涛 に 蔽 はるる 程 なるに、イエズスは 眠 り 居  給 へり。
8:25 弟子  等  近 づきて 之 を 起 し、 主 よ、 我  等 を 救 ひ 給 へ、 我  等  亡 ぶ、と 云 ひければ、
8:26 イエズス 彼等 に 曰 ひけるは、 何 ぞ 怖 るるや、 信仰  薄 き 者 よ、と。 即  起 て 風 と 湖 とを 戒 め 給 ひしに、 大凪 となれり。
8:27 斯 て 人々  感嘆 して、 是 は 何人 ぞや、 風 も 湖 も 是 に 從 ふよ、と 云 へり。
8:28 イエズス 湖 の 彼方 なるゲラサ 人 の 地 に 至 り 給 ひしに、 惡魔 に 憑 かれたる 者  二人 、 墓 より 出 でて 迎 へ 來 れり。 豫 てより 其  猛 き 事  甚 しく、 誰 も 其  途 を 過 ぎ 得 ざる 程 なりしが、
8:29 忽  叫 びて 云 ひけるは、 神 の 御子 イエズスよ、 我  等 と 汝 と 何 の 関係 かあらん、 期  未  至 らざるに、 我  等 を 苦 しめんとて 此處 に 來 り 給 へるか、と。
8:30 然 るに 彼等 を 距 る 事  遠 からぬ 處 に、 多 くの 豚 の 群  物  喰 ひ 居 ければ、
8:31 惡魔  等 イエズスに 願 ひて 云 ひけるは、 若  我  等 を 此處 より 逐  払 い 給 はば、 豚 の 群 の 中 に 遣 り 給 へ、と。
8:32 イエズス 彼等 に、 往 け、と 曰 ひしかば、 彼等  出 でて 豚 に 憑 き、 見 る 見 る 群  皆  遽 しく、 崖 より 湖 に 飛入 りて 水 に 死 せり。
8:33 牧者  等  逃 げて 町 に 至 り、 一切 の 事 と 惡魔 に 憑 かれたりし 人々 の 事 とを 吹聴 せしかば、
8:34 直 に 町  挙 りてイエズスを 出  迎 へ、 是 を 見 るや 其  境 を 過 ぎ 給 はん 事 を 乞 へり。